案内が雑

会社員。約三十歳。思ったことを書きます。

おじさんの傘

今週のお題「傘」

 

傘という言葉から最初に連想するのは、小学校の国語の教科書に載っていた「おじさんの傘」というお話です。

 

おじさんのかさ (講談社の創作絵本)

おじさんのかさ (講談社の創作絵本)

  • 作者:佐野 洋子
  • 発売日: 1992/05/22
  • メディア: 単行本
 

 

おじさんはきれいな傘を大事に、毎日持ち歩いています。おじさんは傘が大好きで大事なあまり、雨に濡らしたくありません。

小雨が降ってもおじさんは傘を差しません。もう少し雨が強くなっても傘を抱えて小走りします。とうとう、大雨が降った時には、傘を抱えながら道行く人に「すみませんが、あなたの傘の中に入れてもらえませんか」とお願いするのです。

なんと本末転倒な話でしょうか。雨に濡れることを防ぐための傘なのに、大事にしすぎてむしろ自分が濡れてしまう道を選ぶとは。

 

国語の授業で読んだ物語はたいてい忘れている私ですが、この話だけはなぜかよく覚えています。小さいながらにおじさんの気持ちが理解できていたのでしょうか。

今思い返すと、僕は一番大事な物は最後の最後まで残しておく癖がありました。わかりやすいのはゲームで、一番強い技やすべてを回復できるアイテム、なかなか手に入らないアイテム、ふしぎなアメ。そういったものはここぞという時のためにとっておく。

それらの貴重な手段を使わずとも、クリアできるようなむしろ苦しい道を選ぶ。

 

おじさんは大好きな傘を綺麗な状態で保ちたかった。私は貴重なアイテムや技を最後まで残しておきたかった。改めて考えると、同機はちょっと違うかもしれないけれど、共通していることは、きれいなままで保つことよりも、本来あるべき使われ方をした方がその道具たちはより輝くということを、まだ知らない事な気がします。

 

きっとおじさんも、大事な傘を雨の中で差してみたいという気持ちがあったんじゃないでしょうか。でも、一度差してしまうと、もう新品の傘には戻れない。いくら乾かしたとしても、かさの折り目とか、きれいに整って巻かれている姿とか、そういった新品の傘だけが持つ気品が無くなってしまう事に恐れていたのかも。

そんな危険を冒すくらいなら新品の傘を持つことも幸せなのだから、このままの姿で持ち歩こう。そんな葛藤があったのかもしれないと、勝手におじさんと私の気持ちを混ぜ合わせて読んでいた気がします。

 

おじさんは物語の最後に、とうとう雨の中、おじさんの傘を差します。そして、雨水に濡れた傘を眺めながら、この傘も悪くないなとほほ笑んでいた。そんな終わり方でした。

傘は傘として一番輝く使い方がある。新品の状態ですらそんなに好きな傘ならば、その傘がもっと輝く方法を考えてあげよう。

出会ったときの形が良い事はわかる。でももっとその魅力を活かすこともできるんだよと、教えてもらった気がしました。