父と私の初めての共通点
今週のお題「お父さん」
私は小さいころからテレビやゲームが好きだった。
私の父はテレビやゲームが嫌いで、一日中テレビにかじりついていた私はよく怒られていた。
私はテレビが大好きだったけど、私が好きなめちゃイケに父は興味を示さなかった。私はゲームが大好きだったけど、私が好きだったカスタムロボには父は興味を示さなかった。
父は平日が休日で、家でパソコンをいじっているか、一人でダイビングとかスキーに出かけていた。確か自分ひとりでライセンスを取っていた気がする。
父の趣味は、私が興味を持つような世界じゃなかった。精神的にも経済的にも、子供ひとりでは入り込めない領域だった。
仕事柄、土日に働いていた父だったので、休日に一緒に遊びに出かけるとか、父の趣味に連れて行ってもらうみたいな経験が全然なかった。
父の好きな物を知る機会が無かった。知る機会が無さすぎて、「私と父に共通する何か」を探そうという考えすら、今思えばなかった。
あるとき、急にこんなことを言われた。
「ナルトって面白いね。」
その頃、私はナルトが好きでコミックスを集めていた。
中学生だった私は、自分の部屋を与えられていて、自分の本棚にはナルトが10巻くらいまで並べてあった。
父はわざわざ私の部屋に入り、本棚を物色し、ナルトを読んで、面白いと感じているということに驚いた。
テレビとかゲームが嫌いだった父が、マンガは興味分野の内側にあることを初めて知った。
そんな風に、ほぼはじめてに近い父との接点を提示された私は「だよねー」と言って会話を終わらせてしまった。
そこからどんな風に会話を進めれば良いのかわからなかった。
ここでも、子供の私が楽しむナルトと、大人である父が楽しむナルトには共通点が無い気と勝手に思っていた。
それでも、共通の好きな物を見つけた私は、それまで適当に買っていたナルトの単行本を発売日に購入するようになった。確か画集も買った気がする。
父との共通点を見つけることができて嬉しかった。
しかし、そんな楽しい日々はずっとは続かない…
中忍試験の途中、砂忍の反逆が始まったあたりで父がこう言った。
「中忍試験までは面白かったよね」
それ以来、父のナルトへの興味は無くなってしまったようだった。
当時の私には、つまらなくなったという感想が、理解できるような理解できないような、中途半端な解釈をしていた。その時正にジャンプで連載している、中学生のメインコンテンツを否定することが私には考えられなかった。
けれど、大人になった今なら言える。
ナルトは中忍試験までが一番面白い。